肺にも「味覚」がある!?
「味を感じるのは舌だけ」と思っていませんか?
実は、肺にも味覚を感知する センサー が存在することが、
近年の研究で明らかになっています。
肺の表面を覆う 線毛上皮細胞 や 粘液分泌細胞 には
舌や腸と同じ
が
発現しているのです。
つまり 肺も、吸い込んだ 空気の 化学的な味 を感じ取り、体を守るための 反応を起こしています。
ウイルス感染などから肺を守る「味覚受容体」
私たちは1日に およそ 1万リットルもの空気 を吸い込んでいます。
その空気 には ウイルス、細菌 、真菌(カビ)など、数えきれないほどの 病原体 が含まれています。
それでも 私たちが 毎日「感染せず」にいられるのは、
肺の 表面を 覆う 気道上皮が、単なる
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味覚受容体
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本来、舌で 甘味 や 苦味などを感じるための センサー ですが
近年の研究で、この受容体 が舌以外の 臓器
とくににも
発現していることが明らかになりました。
肺の 気道上皮(線毛上皮細胞や粘液分泌細胞)には、
次の ような👇👇👇 👇👇👇が 存在します。
①苦味受容体(TAS2R群)
②甘味受容体(T1R2/T1R3)
これらが協調的に働くことで肺は 吸い込んだ空気の 化学成分 を感じ取り
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「防御反応を制御」しています。
苦味受容体:敵を察知して「攻撃開始」
私たちの体の中で
は、
単に「苦い味」を感じるためのセンサーではありません。
実は、細菌が放出する化学物質を鋭く感知して、
体の防御システムを起動する 警報装置 のような役割を果たしています。
代表的な例が、という分子です。
アシル化ホモセリンラクトンは 細菌 が 仲間同士 で コミュニケーション を取る際に使う 信号物質(クオラムセンシング分子)です。
のが
を検知すると、
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細胞はただちに防御モードに切り替わります。
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カルシウム濃度が上昇し、一酸化窒素(NO)の合成酵素 が活性化。
生成された 一酸化窒素(NO)は
👇👇👇👇👇👇二つの働きを持ちます。👇👇👇👇👇👇
1つ目は、「殺菌作用」です。
一酸化窒素 は 細菌の細胞膜 や DNAを傷つけ、増殖を抑える働きを持っています。
つまり、体内に侵入した 細菌に対して直接的にダメージを与える「化学的な武器」として働きます。2つ目は、「線毛運動の促進」です。
一酸化窒素は 気道の表面にある線毛(せんもう)の動きを活発にします。
線毛は 粘液とともに 病原体を 喉の方向へ押し出し、吸い込んだ 細菌を 物理的に 体外へ排出します。
このようにして、私たちの 肺は吸い込んだ細菌を
化学的(殺菌)にも「物理的(排出)にも排除しているのです。
つまり、「苦味受容体」は味覚だけでなく、
細菌を察知して 防御反応を引き起こす 免疫センサーとしての顔も持っているのです。
■甘味受容体:防御のやりすぎを抑える
ウイルスや細菌が侵入すると、最初に反応するのは苦味受容体(T2R系)です
感染が落ち着くと、気道の粘液中には細菌が減り、グルコース濃度が上昇します。
この糖分の増加を感知するのが
です。
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やを
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抑制します
つまり苦味=攻撃開始 甘味=鎮静・制御 という二重の制御機構によって、
肺は「防御と炎症のバランス」を保っています。
この「化学的バランス感覚」こそ、
私たちが日々呼吸を通して外界と触れながらも、
炎症を最小限に保ち、健康を維持できる秘密といえます。
■苦味受容体と呼吸器疾患の新しい治療
は、
感染防御 だけでなく、 気道疾患の新しい治療標的 として注目されています。
👇👇👇👇👇👇最近の研究で注目されているのが、👇👇👇👇👇👇
と呼ばれる物質です。
「苦味作動薬」とは、苦味受容体を活性化させる物質のことです。
この受容体が刺激されると、気道の筋肉が一時的に緩み(弛緩)、
呼吸がしやすくなる=気道が広がることが確認されています。
また、同時にも示すことがあり、
細菌感染の 予防や炎症性疾患 の改善にも 役立つ可能性があるとされています。
この発見は、これまでの 呼吸器治療の 考え方を 大きく変えるもので、
研究者たちは 今、の開発を 進めています。
従来の薬(β₂刺激薬など)は、神経やホルモンを介して気道を拡張させていました。
一方、「苦味作動薬」は味覚受容体を直接刺激することで気道を広げるという、
全く新しいメカニズムに基づいています。
もしこのが実用化されれば、
喘息 や 慢性閉塞性肺疾患 などの患者にとって、
副作用が 少なく、即効性のある新しい治療法となる 可能性があります。
「苦味を感じる」ことが、呼吸を楽にし、肺を守る力になる。
そんな新しい時代の扉が、いま開こうとしているのです。
「肺マイクロバイオータ」
近年の研究で、「肺にも腸と同じように微生物が棲んでいる」ことが分かってきました。
それがです。
かつて肺は「無菌」と考えられていましたが、現在では、
健康な人の肺にも多様な微生物が存在し、
呼吸器の恒常性(バランス維持)に関わっていることが明らかになっています。
「肺マイクロバイオータ」は、宿主の年齢、喫煙歴、生活環境、職業での粉塵ばくろ、感染歴、抗生物質の使用、持病(COPD・喘息など)などの影響を受けて、常に変化しています。
👇👇👇👇特に「疾患状態」では、次のような特徴的変化が報告されています。👇👇👇👇
| 状況 | 肺マイクロバイオータの変化 |
|---|---|
| COPD(慢性閉塞性肺疾患)・喘息・肺炎・肺線維症・肺がん | 微生物の多様性が低下し、特定の菌が過剰増殖する傾向 |
| ARDS(急性呼吸窮迫症候群) | 微生物負荷(菌量)の増加、多様性の減少、菌構成の変化が発生 |
これらの変化は、炎症反応の持続や免疫バランスの破綻、
さらには病状の悪化にも関係していると考えられています。
つまり、「肺の中の微生物環境」は、呼吸器の健康と密接に結びついているのです。
「食物繊維」を食べることが、「呼吸器」の健康を守る
私たちが食べた食物繊維をエサにして発酵し、
と呼ばれる代謝物作り出します。
この「酢酸」は、腸の中だけで働くわけではありません。
血液に乗って全身をめぐり、
肺にも届くのです。
肺の細胞にはという
小さなセンサーのような受容体があります。
これは「酢酸を感じ取るアンテナ」のようなもので、酢酸が届くとスイッチが入ります
👇👇👇👇このスイッチが入ると、👇👇👇👇
肺の細胞は
という
を多く作り始めます。
このインターフェロンは、
「ウイルスが入ってきたぞ!」「周りの細胞も防御体制をとれ!」
という信号を出す、体の警報システムのような存在です。
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ウイルス(RSウイルス・インフルエンザ・新型コロナなど)に感染しても、
ウイルスが広がりにくくなり、肺炎の重症化を防ぐことができます。
免疫の働きすぎ(過剰な炎症)」をおさえる作用もあります。
させることで
であるの産生を促進し
を高めます。
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ならず、が軽減されると考えられています
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というように、体の防御バランスを整えてくれるのです。
腸肺相関 ― 肺と腸が交わす免疫の対話
が
肺の免疫反応をコントロールする仕組みを
と呼びます。
腸は単なる「食べ物の通り道」ではなく、体全体の免疫を調節する司令塔としても働いているのです。
近年ではその逆方向、
「肺から腸への情報伝達」も確認されつつあります。
肺と腸は、まるで「双方向通信を行うネットワーク」のように互い
に影響を及ぼし合っているのです。
リポポリサッカライド(LPS)が示した肺→腸の影響
という物質は、
細菌(グラム陰性菌)の細胞の外側にある壁の成分です。
このリポポリサッカライドは、体の免疫細胞をとても強く刺激することで知られています。
免疫細胞にあるという
👇👇👇👇センサーに結合すると👇👇👇👇
がたくさん放出されます。
これらのサイトカインは
炎症を起こす信号として全身に広がります。
まず肺で炎症が起こり、炎症性サイトカインが血液中に流れ出します。
すると、この「炎症の信号」は全身をめぐり、腸にも届くのです。
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- 肺で炎症が発生
LPSが肺の免疫細胞を刺激し、炎症性サイトカインが放出されます。
(例:TNF-α、IL-6、IFN-γなど)- サイトカインが血流に乗って全身へ拡散
これらの炎症性シグナルは全身循環に乗り、遠隔臓器である腸にも到達します。- 腸管免疫が活性化
サイトカイン刺激によって腸の免疫細胞(特に樹状細胞やB細胞)が活性化され、腸粘膜上皮から抗体(主にIgA)が分泌されます。- 腸内マイクロバイオータの組成変化
分泌された抗体が腸内の一部の細菌群を除去することにより、細菌叢の構成バランスが変化します。
この過程で、腸内の善玉菌群(例えばFirmicutes門)が減少し、
代わりに炎症促進的な菌群が増加することも確認されています。
炎症とディスバイオシスの連鎖
このように、がすることで、
腸内マイクロバイオータのバランスが乱れる
が生じます。
ディスバイオシスが起きると、腸の「バリア機能」が弱まり、
腸内で炎症が起こりやすくなったり、有害物質が血液に入りやすくなったりします。
ディスバイオシスは単なる腸内の問題ではなく、
全身的な「免疫恒常性」に影響を与えます。
結果として、全身の免疫バランスがさらに乱れるという悪循環に陥るのです。
👇👇👇👇は👇👇👇👇
- インフルエンザウイルス感染
- 新型コロナウイルス感染(COVID-19)
などでも実際に観察されています。
感染症が重症化するほど、腸内細菌の多様性が失われ、
免疫維持に重要な菌(Firmicutesなど)が減っていくことが報告されています。
これらの疾患では、「腸内マイクロバイオータの多様性」が著しく低下し、
とくに「免疫維持に関与するFirmicutes門の細菌群」が減少します。
その結果、「腸管バリア機能」が低下し、「全身性炎症や免疫異常」が助長されるのです。
最後に 腸と肺の双方向ネットワークについて
私たちの体の中で、「腸」と「肺」はそれぞれ離れた場所にありますが
この二つの臓器が互いに影響を与え合っていることがわかっています。
双方向の通信を行うネットワークのような関係でこの関係は
と呼ばれ、
免疫や代謝のバランスを保つうえで重要な役割を果たしています。
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腸内には腸内マイクロバイオータ(腸内細菌叢)がすみついています。
これらの細菌は、私たちが食べた
👇👇👇👇食物繊維や栄養素を分解・発酵👇👇👇👇、
などの
代謝産物を作り出します。
これらの物質は血液に乗って全身をめぐり、肺にも届きます。
たとえば、「酢酸(SCFAの一種)」は肺の細胞にあるGPR43受容体を刺激して、
「1型インターフェロン(IFN)」という抗ウイルス物質の産生を促します。
この仕組みによって、肺の免疫が強化され、
ウイルス感染への抵抗力が高まることがわかっています。
つまり、腸で作られた代謝物が「肺の免疫防御」を助けているのです。
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一方で、「肺から腸」への影響も確認されています。
肺に炎症が起こると、体内で「炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)」が放出されます。
これらの物質は血液に乗って全身をめぐり、腸にも届きます。
腸に炎症性の信号が伝わると、腸の免疫細胞が刺激され、
腸粘膜から抗体(IgAなど)が分泌される一方で、
腸内細菌のバランス(マイクロバイオータの構成)が変化します。
とくに、免疫を整える「善玉菌(Firmicutes門など)」が減少し
代わりに炎症を助長する菌が増えることが報告されています。
このように、肺での炎症が腸の環境を乱すこともあるのです。
このように、「腸→肺」と「肺→腸」の間には、
それぞれ異なるタイプのシグナルが行き来しています。
| 方向 | 主なシグナル | 内容 |
|---|---|---|
| 腸 → 肺 | 代謝性シグナル | 短鎖脂肪酸(酢酸)、胆汁酸、トリプトファン代謝物など |
| 肺 → 腸 | 免疫性シグナル | 炎症性サイトカイン、抗体(IgAなど) |
「腸と肺」はこのように、代謝と免疫を介してつながる双方向ネットワークとして働いており
互いの状態を反映し合う臓器関係にあります。
腸は、ただ食べ物を消化・吸収する器官ではありません。
脳・肺・免疫・代謝のすべてと情報をやりとりする「全身ネットワークの中心(ハブ)」です。
- 腸→脳:血液・迷走神経・ホルモン・ニューロポッド細胞を通じて多層的に通信
- 腸→肺:短鎖脂肪酸(酢酸)→ GPR43 → IFN増加 → 抗ウイルス性の強化
- 肺→腸:炎症性サイトカインのシグナルで腸免疫と腸内フローラを再編成
このように腸は、全身の免疫・神経・代謝のネットワークをつなぐ
「司令塔」として機能しています。
インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症で重症化しやすい人ほど
腸内細菌の多様性が低下していることがわかっています。
腸内フローラが乱れると、「腸管バリア機能」が低下し、
炎症が全身に波及してしまうのです。
そのため、腸内細菌叢の健全性を保つことが感染症の重症化予防につながると考えられています。
「腸を整えること」は、肺を含む全身の免疫レジリエンス(回復力・抵抗力)を高めることにつながります。
- 食物繊維をしっかり摂る(野菜・豆類・きのこ・海藻など)
- 発酵食品をとる(味噌、ヨーグルト、納豆など)
- 腸を冷やさず、十分な睡眠とストレスケアを行う
これらの習慣が、腸と肺のネットワークを健やかに保ち、
感染症や慢性炎症から体を守る力を高めてくれます。
腸と肺は、代謝と免疫によってつながる「双方向ネットワーク」。
腸内環境を整えることは、
「肺の健康」「免疫バランス」「全身の防御力」を高めることにつながります。
つまり、腸を整えることは、体全体を守る第一歩なのです。

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