1秒で100通り!人の声がすごい理由

人間関係

言語とは何か?

言語とは、音によって意味を伝える人間のシステム

言語とは、音(声)を使って意味を伝えるための仕組みです。私たち人間は、ただ音を発するだけでなく、それに意味を結びつけることで、考えや感情、意図を他者に伝えることができます。この「音」と「意味」の結びつきがあるからこそ、言語はコミュニケーションの道具として機能するのです。

特に音声言語(話す言葉)は、発音、抑揚(イントネーション)、リズム、間などの多くの要素を含み、これらを組み合わせることで、単なる情報だけでなく、感情や空気感、態度までも相手に伝えることができます。声そのものが、意味を豊かに彩る大きな手がかりとなっているのです。


「話し言葉」と「書き言葉」の違い

私たちは、日常的に「話すこと」と「書くこと」を使い分けながら生活しています。しかし、この二つの言葉の使い方は、同じ日本語であっても性質が大きく異なります。

話し言葉は、会話やスピーチ、授業など、相手とリアルタイムでやり取りを行う手段です。声や表情、ジェスチャーといった非言語情報も加わるため、感情やニュアンスが伝わりやすく、柔軟なやりとりができます。また、聞き手の反応を見ながらその場で言い換えたり補足したりすることで、誤解を防ぎ、スムーズなコミュニケーションが可能です。

一方、書き言葉は、手紙やメール、報告書、文章など、時間をかけて考えながら言葉を選び、正確に伝えるための手段です。声や身振りが使えない分、文法や語彙の正確さ、論理の整合性が求められます。すぐに反応を得ることは難しい反面、じっくりと考えを深めたり、長期的に記録として残したりするのに適しています。

言葉良さ

私たちは日常生活の中で、話し言葉を通して気持ちを伝え合い、理解し合いながら人間関係を築いています。話し言葉の良さのひとつは、「誤解を招きにくい」という点です。声の抑揚や表情、ジェスチャーなど、文字にはない非言語的な情報が加わることで、話し手の意図や感情が相手に伝わりやすくなります。たとえば、同じ言葉でも、笑顔で言うのと無表情で言うのとでは、伝わる印象は大きく異なります

さらに、話し言葉では声のトーンやリズム、間の取り方などを通じて、喜びや驚き、怒り、悲しみといった微細な感情や空気感までも伝えることができます。言葉の正確さだけでなく、話し方そのものが相手の心に届くメッセージになるのです。

加えて、話し言葉にはある程度の文法的な自由さがあり、形式にとらわれすぎずに自然な言い回しができます。これにより、話し手の個性や親しみやすさがにじみ出て、相手との距離を縮めることにもつながります。

このように、話し言葉は「言葉以上の情報」を含んでおり、感情やニュアンスを豊かに伝える力を持っています。誤解を減らし、共感や信頼を築くために、話し言葉はとても優れたコミュニケーション手段なのです。

「声のもと」を生み出す声帯

声帯は、喉頭という器官の中にある、左右一対の粘膜でできたヒダ状の組織です。
ヒダ状の器官で、肺から送り出される空気の流れを受けて、1秒間に100回から1000回近くまで振動します。この高速振動が、私たちの「声のもと(音源)」になります。

このような高速振動が可能なのは、以下のような理由によります:

  • 声帯が非常に小さく、軽く、弾力がある
  • 声帯周囲の筋肉によって精密にコントロールされている
  • 空気圧と構造(ベルヌーイ効果)による自然な開閉の繰り返し

しかし、このような繊細で高速な動きを、傷つけることなく維持するためには、声帯が常に「潤っている」ことが不可欠なのです。

声帯に「潤い」が必要なのは、

声帯が非常に繊細で、高速で振動する器官だからです。私たちが声を出すとき、声帯は1秒間に100回から1000回ものスピードで開閉し、空気の振動を作り出しています。このとき、声帯表面が乾燥していると、摩擦が強くなり、粘膜に傷がついたり、炎症を起こしたりしやすくなります。

潤いのある状態では、声帯の粘膜がなめらかに振動できるため、発声がスムーズになり、声枯れや痛みを防ぐことができます。また、適度な湿度は声帯の柔軟性や弾力性を保つ役割も果たしており、滑らかで安定した音を出すうえで欠かせません。

とくに声をよく使う人(声優・教師・歌手など)は、水分補給や加湿を意識することが大切です。乾燥した環境や水分不足は、声の質や持続力に大きく影響します。

声帯の疲労

私たちが話したり歌ったりするたびに使っている声帯は、非常に繊細で重要な器官です。この声帯も、無理をすれば当然疲れがたまります。声帯の疲労とは、長時間の使用や無理な発声によって、声帯の粘膜や筋肉が過度に酷使され、声が出しづらくなったり、かすれたりする状態を指します。

症状としては、声がかすれる・震える・高音が出ない・喉に違和感がある・長時間声を出し続けられないといった変化が現れます。これらは、声帯が炎症を起こしていたり、緊張が続いて筋肉が疲れているサインです。

こうした疲労の原因には、長時間の会話や歌唱、大声の連続、乾燥した環境、水分不足、そして喉に力を入れた発声習慣などが挙げられます。また、体調不良や睡眠不足も、声帯のコンディションを悪化させる要因になります。

声帯の疲労を防ぎ、回復させるためには、まず十分な「休息」が必要です。なるべく声を出さない時間を作り、声帯を休ませることが第一です。また、こまめな水分補給や加湿によって、声帯の粘膜を潤すことも大切です。さらに、無理のない発声法を身につけることで、日頃から声帯にかかる負担を軽減することができます。

声の高さを決める三つの要素

喉の不調が長引く場合や、声が思うように出ないと感じるときは、自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診することが望ましいです。声帯は一生使う大切な器官だからこそ、日頃のケアと早めの対応が、健康で美しい声を保つ鍵となります。

声の高さ(=音の高低)を調整するには、声帯の張力・長さ・厚みを巧みに変化させる必要があります。これは、私たちの声帯周辺にある複数の筋肉が絶妙に連動して働くことで実現されます。以下に、それぞれの要素について詳しく説明します。

■ 声の高さはどうやって変えているのか?

私たちが話すときや歌うとき、声の「高さ(音の高低)」は、声帯の状態と筋肉の働きによって細かくコントロールされています。声が高くなったり低くなったりするのは、声帯の張力(ピンと張る力)・長さ・厚みの変化によるものです。これらの調整には、喉の中にある複数の筋肉が連携して働いています。


■ 声を高くするための動き

声を高くするためには、まず声帯をピンと強く張る必要があります。このときに活躍するのが「輪状甲状筋(りんじょうこうじん)」という筋肉です。この筋肉は、声帯の両端を引っ張って細く長くすることで、より速く振動させます。速く振動すればするほど、音は高く聞こえるようになります。

また、高音を出すときは、声帯全体ではなく一部分だけが薄く振動することもあります。これは声帯を細かくコントロールすることで、柔らかく、明るい声質の高音を作ることができます。


■ 声を低くするための動き

反対に、低い声を出すときには、声帯をゆるめて、厚くて短い状態にします。この調整には、「甲状披裂筋(こうじょうひれつきん)」や「声帯筋」と呼ばれる筋肉が関わっており、声帯の厚みや張り具合を細かく調節しています。

厚みのある声帯は、重くゆっくりと振動するため、落ち着いた深い声になります。声優やナレーターの「低音ボイス」は、こうした筋肉の使い分けで生まれています。


■ 声の高さの調整は「筋肉の連携」で成り立っている

声の高さを自由に変えるためには、声帯そのものだけでなく、それを支える筋肉たちが連携して働く必要があります。

  • 輪状甲状筋:声帯を伸ばして高音に
  • 甲状披裂筋:声帯の厚みと緩みを調節して低音に
  • 外側輪状披裂筋・後輪状披裂筋:声帯の開閉を調整して呼吸や発音をコントロール

これらが協力して働くことで、私たちは自然に、あるいは意識的に声の高さを変えることができるのです。

■意識的に低い声を出すときに働く筋肉:胸骨舌骨筋の役割

私たちが低い声を出そうと意識したとき、のど(喉頭)の位置は自然と下がる方向に動きます。これは、声帯の緊張をゆるめ、振動をゆっくりにすることで、より低い音を出すための自然な身体の反応です。

このとき、重要な役割を果たすのが胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん)という筋肉です。胸骨舌骨筋は、胸の中央にある「胸骨」から、喉の奥にある「舌骨」という小さな骨までつながっている筋肉です。

胸骨舌骨筋が収縮すると、舌骨が下に引っ張られ、それに連動して喉頭全体も下がります。喉頭が下がることで、声帯がゆるみ、振動がゆっくりになり、落ち着いた・深みのある低音の声を出しやすくなるのです。

ナレーションや朗読、重厚感を求められる演技などで「低く響く声」を意識的に出すとき、私たちは無意識のうちにこの胸骨舌骨筋などの「喉頭下降筋群」を使っています。

ただし、喉を必要以上に下げすぎると、逆に声が不安定になったり、響きが失われたりすることもあるため、これらの筋肉をバランスよくコントロールすることが大切です。

声の良い抑揚 聞き手にとって心地よく、わかりやすい話し方

声の良い抑揚とは、聞き手にとって心地よく、伝わりやすい話し方のことです。
単調な口調ではなく、声の強弱や高さ、話す速度や間の取り方を工夫することで、言葉の意味や話し手の感情がより豊かに伝わります。


抑揚を構成する4つの要素

1. 声の強弱をつける

話の中で重要な部分は少し声を強く、逆に静かに伝えたい場面では声を弱めて抑えることで、自然にメリハリが生まれます。また、疑問や驚きといった感情を表すときには声の高さを上げたり、落ち着いて説明したいときには少し低めに話すと、聞き手に伝わる印象が大きく変わります。

2. 音の高さを変える

声の高さ(ピッチ)を意識的に変化させることで、感情や話の流れが豊かに伝わります。
たとえば、疑問や驚きを表すときは少し高めに、安心感や落ち着きを表すときは低めに話すことで、より自然で説得力のある話し方になります。

3. 話す速度や「間(ま)」を使う

話すスピードを一定にせず、緩急をつけたり、適度な「間(ポーズ)」を取ることで、聞き手に理解の余地や印象づけの時間を与えます。
重要な前置きのあとに一拍おく、あるいは結論の前に静かに間をとることで、内容の印象をぐっと高めることができます。

4. 感情を込める

話し手の感情がこもっていると、聞き手も共感しやすくなります。
喜び、悲しみ、驚き、怒りなどの気持ちを、声の調子に自然にのせることで、言葉の内容だけでなく「伝えたい想い」まで届けることができます。


抑揚のある話し方の効果

  • 聞き手の注意を引きつけやすくなる
  • 話の内容が記憶に残りやすくなる
  • 感情や意図がより正確に伝わる
  • 単調にならず、話にリズムや温かみが生まれる

一方で、抑揚のない平坦な話し方は、聞き手にとって退屈に感じられたり、大切な部分が伝わりにくくなったりする可能性があります。


抑揚必要筋肉の役割

「声の良い抑揚」は、話の内容や感情を効果的に伝えるための、声の強弱・高さ・リズムのコントロールですが、その背後には実は多くの筋肉の働きが関わっています。

  1. 声帯を動かす筋肉(喉頭筋)
     声の高さや音質は、声帯を伸び縮みさせることで生まれます。この調整を行うのが、声帯のまわりの筋肉です。高い声や低い声、柔らかい声などを出し分けるには、これらの筋肉を繊細に使いこなす必要があります。
  2. 呼吸筋(横隔膜・肋間筋など)
     声の強弱や持続力は、息のコントロールによって決まります。話しながら自然に抑揚をつけるには、横隔膜やお腹まわりの筋肉を使って呼吸を安定させる必要があります。
  3. 表情筋や口の周りの筋肉(顔面筋)
     言葉をはっきりと発音し、感情を伝えるには、口や頬、眉などの表情筋も重要です。特に笑顔や驚きなど、感情の「音」と「表情」が一致していると、伝わり方が格段に良くなります。
  4. 姿勢を支える筋肉(体幹)
     良い姿勢を保つことで、声が通りやすくなり、安定した話し方ができます。猫背や力の入らない姿勢では、抑揚のある話し方は難しくなります。

声の良い抑揚とは、単に声の出し方だけでなく、全身の筋肉と連携した表現力でもあります。トレーニングや意識によって鍛えることもでき、演説やプレゼン、歌などではとくに重要視されます。

つまり、「伝わる声」は、感情 × 技術 × 筋肉のバランスで成り立っているのです。

調音点と調音法2つの大切な要素

「調音」が音の輪郭や形をつくり、「響き」がその音に色や印象を与える

人が声を出して言葉を発するとき、その音はただ喉から出るだけでなく、

どのように作られ(=調音)」「どこでどのように響くか(=響き)」によって、音の性質や印象が大きく変わります。
この「調音」と「響き」は、発音の土台をなす2つの重要な要素です。

「調音(ちょうおん)」とは、

音をどのように作るかという過程のことを指します。肺から送り出された空気が声帯を通って振動し、その音が舌・唇・歯・口蓋などの器官を使って形作られることで、さまざまな音(子音や母音)が生まれます。たとえば、「た」という音は、舌先が上あごの歯茎に一瞬触れて、そこから空気が一気に解放されることで生じます。このように、

音を作る部位や動き(=調音点と調音法)によって、私たちは言葉を区別し、正しく伝えることができます。

「響き」とは

声帯で作られた音がどのように口や鼻などの空間に響いて最終的な音色になるか、という性質のことです。音は、口の中(口腔)や鼻(鼻腔)、喉の奥(咽頭腔)などの「共鳴腔(きょうめいくう)」を通って響きが増幅され、明るくクリアに聞こえたり、深く落ち着いた印象を与えたりします。たとえば、「い」や「え」といった前舌母音は口の前方で響きやすく、明るく鋭い音になります。一方で、「う」や「お」などの後舌母音は、喉の奥や鼻側に響きやすく、落ち着いた柔らかい音になります。

調音点(ちょうおんてんと調音法(ちょうおんほう)

私たちが話すときに発する音(とくに子音)は、肺から出た息が、口の中や喉、鼻の中などで形を変えて作られます。このとき、「どこで」「どうやって」音が作られるかによって、それぞれの音の特徴が決まります。

調音点とは、「どこで」を表すのが調音点、

発音の際に空気の通り道をせばめたり、せき止めたりする場所を意味します。
具体的には、舌・唇・歯・口蓋(こうがい)などの発音器官のうち、空気と接触して音が作られる位置のことです。

簡単に言えば、音を作る「場所」「どこで音を作っているか」という意味です。

調音点説明例(日本語の音)
両唇音(りょうしん)上唇と下唇を使うぱ・ば・ま(p/b/m)
唇歯音((しんしおん)上の歯と下唇を使う英語の「f」「v」など(日本語にはない)
歯茎音(しけいおん)舌先と上の歯の付け根(歯茎)を使うた・だ・な・さ・ざ(t/d/n/s/z)
硬口蓋音(こうこうがいおん)舌と上あごの硬い部分を使うひ・に(h(palatalized)/ɲ)
軟口蓋音(なんこうがいおん)舌の後ろと上あごの柔らかい部分を使うか・が(k/g)
声門音(せいもんおん)声帯の間(声門)で音を作るは(h)など

調音法とは、「どうやって」を表すのが調音法と呼ばれています

私たちが音声を発する際に、息の流れをどのように調整して音を作り出すかという「方法」や「仕組み」のことを指します。

つまり、音を作る「方法・動き」「声を出すときに、口や喉で息をどうコントロールしているか」という視点から、音を分類する考え方です。

人間の音声は、肺から送られる空気が声帯や口腔・鼻腔を通りながら変化し、さまざまな音に形づくられます。その際、空気の流れを止めるのか、こすれさせるのか、鼻に通すのかなど、空気の扱い方によって異なる音が生まれます。これらが調音法の違いです。

調音法特徴例(日本語)
破裂音(はれつおん)完全に息の流れをせき止め、それを一気に開放して「パッ」という音を出します。た・か・ぱ(無声)、だ・が・ば(有声)
摩擦音(まさつおん)口の中に狭い隙間を作り、そこに息を通して「スーッ」「シャーッ」という音を出します。さ・し・ふ・は
破擦音(はさつおん)破裂音と摩擦音を組み合わせた音で、一度破裂し、その後すぐに摩擦音が続くような音です。つ・ち・じ・づ
鼻音(びおん)口の中の通路を閉じて、空気を鼻に通すことで出す音です。鼻に響く特徴があります。な・ま・ん
側音(そくおん) 舌の中央を上あごに押し当て、舌の左右から空気を流す音です。ら(英語の「l」に近い)
接近音(せっきんおん)調音器官が近づくが、完全には閉じず、摩擦がほとんど起こらない音。日本語ではあまり区別されませんが、英語などにはよく見られます。や・わ・英語の「r」など

■声の仕事における重要性■

声優やナレーター、歌手、語学学習者にとって、この調音点・調音法の理解はとても重要です。
発音のしくみを知ることで、明瞭な発音・正確な滑舌・多彩な声の表現が可能になります。

両唇音が「かわいらしさ」を感じさせる

両唇音は、上下の唇を閉じて発音する音のことで、日本語では「ぱ行(ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ)」「ば行」「ま行」などがこれにあたります。こうした音は、言葉の響きとして、やわらかく、明るく、親しみやすい印象を持つことから、多くの場合「かわいらしさ」を感じさせる効果があります。

発音の際に息を唇でふんわりと受け止めて出すため、角の立たない、まるい音色になります。この柔らかさが、聞き手に「優しさ」や「幼さ」を連想させるのです。

さらに、赤ちゃんや幼児が最初に話し始める音として、「まま」「ぱぱ」「ぶーぶー」など両唇音が多く含まれていることから、人は無意識のうちに「両唇音=幼い=かわいい」というイメージを持ちやすくなっています。

日本語のオノマトペ(擬音語・擬態語)でも、かわいさや小ささ、やわらかさを表現するときには、両唇音が頻繁に使われます。たとえば、「ぷにぷに」「ぽよぽよ」「ぱたぱた」といった言葉は、両唇音の繰り返しによって、愛らしさや軽やかさを音の響きで表現しているのです。

  • 発音がやわらかく丸い
  • 赤ちゃん言葉に多い
  • 擬音語に多用される
    といった理由から、人に「かわいい」「親しみやすい」という印象を自然と与える音です。
    音の印象を意識して使うことで、表現の幅はさらに広がります。

声優やナレーターが「幼いキャラ」「かわいいマスコット」「癒し系の存在」を演じる際には、両唇音を含む語を意識的に使ったり、強調して発音したりすることで、印象を大きく変えることができます。

有声性とは有声音と無声音

有声性(ゆうせいせい)とは声帯が振動しているかどうかによって音を分類する音声学の概念です。
特に「有声音(声帯が震える)」と「無声音(声帯が震えない)」の違いは、発音の基本を理解するうえで非常に重要です。

声帯は、喉の奥にある2枚のひだです。発声時に声帯を閉じて息を通すと、声帯が震えて音が出ます。これが「有声音」です。逆に声帯を開いて震えない状態で息を出すと「無声音」になります。

有声音

有声音(ゆうせいおん)とは、声を出すときに声帯が震えている音のことです。たとえば、「が」「ざ」「だ」「ば」などの音を発音するとき、喉に手を当ててみると、ブーッというような振動が感じられます。これが、声帯が震えている証拠であり、これらの音は有声音に分類されます。


  • 声帯が震える
     のどに手を当てて発音すると、ブルブルと振動が感じられます。
  • 音に「声」が乗る
     無声音(息だけの音)に比べて、響きが豊かで聞き取りやすい。
  • 有声音と無声音で意味が変わる言語も多い(英語など)

喉が振動していれば、それは有声音

無声音

無声音(むせいおん)とは、声帯を震わせずに息だけで発音される音のことです。「か」「さ」「た」「は」などの音を発音すると、喉の振動がほとんど感じられません。これは、声帯を使わずに空気の流れだけで音を作っているためで、こうした音が無声音にあたります。

  • 声帯が振動しない
     喉に手を当てて発音すると、振動が感じられません。
  • 息の音が中心
     空気の摩擦や破裂音などが音の主な要素となります。
  • 聞き取りにくい場合がある
     有声音に比べて音量が小さく、柔らかく聞こえることがあります。

分類声帯の振動
無声音振動しないさ、た、は、か など
有声音振動するざ、だ、ば、が など

たとえば「さ」と「ざ」、「か」と「が」は、調音点や方法は似ていますが、声帯を使うかどうかで違いが生まれます。

清音・濁音・無声音・有声音は、音の特徴を理解するうえでとても大切な区別

清音・濁音 × 無声・有声の関係

分類違い
清音 ↔ 濁音音のにごり(濁点の有無)
無声 ↔ 有声声帯が震えるかどうか(声の有無)
音の種類音の例声帯は?濁点あり?
清音+無声音か、さ、た、は震えないなし
濁音+有声音が、ざ、だ、ば震えるあり
清音+有声音な、ま、ら、や震えるなし(でも有声音)

清音=必ず無声音、というわけではありません。
濁音=ほとんどの場合、有声音です。


イメージしやすい覚え方

区分ポイントイメージ
清音にごりがない軽く、ハッキリした音(例:か)
濁音にごっているこもったような重い音(例:が)
無声音息だけ喉が震えない(例:さ)
有声音声帯が震える声が出て響く(例:ざ、な)

響き(共鳴音)と輪郭(阻害音)

共鳴音阻害音は、私たちの声と言葉を形づくるために欠かせない、2つの異なる音のグループです。一見するとまったく異なるように見えるこの2つの音は、実は補い合いながら、言葉に響きと輪郭を与えるという関係にあります。

響き(共鳴音)と輪郭(阻害音)

共鳴音(母音や鼻音)は、息の流れをさえぎらず、口や鼻の中で自然に響く音です。
それに対して阻害音(破裂音・摩擦音など)は、息の通り道を一時的に止めたり、狭めたりすることで生まれる音です。

■共鳴音(きょうめいおん)

共鳴音とは、声を出す際に、喉(声帯)で作られた音が、口腔や鼻腔などの空間に響くことで、増幅・変化した音のことを指します。声の「響き」や「音色」を形づくる非常に重要な要素であり、話し方・歌い方・演技の印象に大きく影響を与えます。

人間の声は、声帯の振動によって生まれる「基本的な音(声帯音)」から始まります。しかしこの音は、とても弱く、個性も乏しいものです。
この音が、喉・口・鼻などの空間を通ることで共鳴が起き、音が大きくなったり、柔らかくなったり、鋭くなったりします。

このようにして、「声として完成された音」=共鳴音が作られます。

共鳴音は、声帯の振動を伴い、口や鼻の空間(共鳴腔)で音が自然に響く音のことで
空気の流れが大きく妨げられず、なめらかで響きのある音が特徴です。

共鳴腔説明音の特徴
咽頭腔(いんとうくう)喉の奥。声が通る最初の空間。深み・低さを与える
口腔(こうくう)舌・歯・唇で形を変える空間。言葉の明瞭さ、音の輪郭を決める
鼻腔(びこう)鼻の中の空間。柔らかく響き、鼻音に関係する
副鼻腔鼻の奥の空洞(上顎洞など)。響きを豊かにする効果

これらの空間を使い分けることで、高音・低音、明るい・暗い、軽い・重い声など、無限の音の表情が作られます。

響きが豊か、音の持続が可能、聞き取りやすく、話し言葉の骨格をつくる

■共鳴高めるためのポイント

  1. 姿勢と呼吸
    • 声は「姿勢」と「呼吸」が土台になります。背筋をまっすぐ伸ばし、胸を開いたリラックスした姿勢を保つことで、共鳴腔が広がり、響きやすくなります。腹式呼吸で安定した息を送ることも、共鳴をしっかり引き出す鍵です。
  2. 喉や舌、口の脱力
    • 共鳴を高めるには、余計な力を抜くことが重要です。喉をしめたり、舌を固くしたりすると、共鳴腔が狭くなり、声がこもったり、通りにくくなります。リラックスした状態を保つことで、音が自然に響きやすくなります。
  3. 口腔・咽頭・鼻腔を意識する
    • 声の響きは主に、次の3つの共鳴腔でつくられます:
    • 口腔(こうくう):明るくはっきりした音をつくる
    • 咽頭腔(いんとうくう):深みのある豊かな響きを生む
    • 鼻腔(びくう):柔らかく、優しい音色を加える
    • それぞれを意識しながら声を出すことで、より立体的な響きを生み出すことができます。
  4. ハミング練習
    • 口を閉じて「ん〜」と響かせる練習は、鼻腔共鳴を高めるのに有効です
    • 共鳴のポイントを体で感じる
    • よく響いている声は、体のどこかに「振動」として感じられます。
    • 鼻の奥が震えるような感覚(鼻腔共鳴)
    • 口の中が空洞になったような広がり(口腔共鳴)
    • 胸に響くような低い音(胸声的共鳴)
    • この「体感」を大切にし、響いている場所を探りながら声を出すことで、自然と共鳴が強くなっていきます。

5.母音の発音を意識する

母音(あ・い・う・え・お)は、共鳴を感じやすい音です。特に「あ」「お」などの広く開いた音では、咽頭や口腔の響きを意識しやすく、「い」「え」などの前舌母音では、明るくシャープな響きが得られます。母音ごとの共鳴の特徴をつかみ、響きのコントロールに役立てることが、プロの発声には欠かせません。

共鳴音は、声そのものの「響き」を決める鍵となるものであり、言葉に「深さ」「感情」「個性」を与えます。
話し方や歌、演技の分野では、この共鳴の扱い方によって声の魅力や説得力が大きく変わるため、プロの発声トレーニングでも重視されているのです。

阻害音(そがいおん)

阻害音とは、発音する際に、口や喉のどこかで空気の流れが強く妨げられることで生じる音のことです。音声学における基本的な分類のひとつで、破裂音・摩擦音・破擦音がこれに含まれます。

阻害音とは、空気の流れがどこかで強く止められて生まれる「鋭くて力強い音」です。
会話や演技の中では、メリハリをつけたい場面や、感情を強調する表現で重要な役割を果たします。

■「阻害音」における清音濁音違い

阻害音の清音と濁音の最大の違いは、「声帯が震えるかどうか」です。
調音点や調音方法(どこで・どうやって息をさえぎるか)は同じでも、声帯の振動の有無によって清音か濁音かが決まります。

清音=息だけ、濁音=息+声帯の振動。

  • 清音(無声音)は、ささやき・冷静・軽快な印象を与えるときに使いやすい。
    • 例:「みのことが…」(内緒話っぽく)
    • 明るい、冷静、優しい印象
  • 濁音(有声音)は、迫力・怒り・力強さを演出するときに適している。
    • 例:「まんできないんだよ!」(強調)
    • 怒り、迫力、重みを出したいとき
音の種類清音濁音どうやって出す?
破裂音た(ta)だ(da)口を閉じて、息をためて「パッ」と出す
摩擦音さ(sa)ざ(za)舌と歯の間から息をこすらせる
破擦音ち(chi)ぢ(ji)一瞬止めて、すぐこすらせるように出す

両者を演技で使い分けることで、感情やキャラクターの個性を的確に伝えることができます。

母音の発音時の舌の高さ 狭母音、広母音、半狭母音

「狭母音」「広母音」「半狭母音」は、母音を分類するための音声学上の用語で、発音時の舌の高さ(上下の位置)や口の開きの程度に基づいて区別されます。

私たちが母音を発音する時、舌は上下に動いて口腔内の空間を調整します。その結果として、舌がどれくらい高く上がっているか(狭い位置か広い位置か)、あるいは口がどのくらい大きく開いているかによって、音の種類が決まってくるのです。

■狭母音(きょうぼいん)

舌が高い位置にあり、口の開きがもっとも小さい母音です。
空気の通り道が狭いため、「きゅっ」と引き締まったような響きを持ちます。
日本語では「」「」がこれにあたります。

  • 舌の位置:非常に高い(口の中の上の方に舌がある)
  • 口の開き:とても小さい(唇をすぼめることが多い)
  • 発音の特徴:口をあまり開けずに出す音。高くて鋭い印象の音。

■半狭母音(はんきょうぼいん)

狭母音と広母音の中間に位置し、中くらいの舌の高さ・口の開きをもつ母音です。
」や「」がこのグループに入ります。

  • 舌の位置:狭母音よりやや低い(中くらいの高さ)
  • 口の開き:やや大きめ
  • 発音の特徴:狭母音ほど鋭くはないが、まだはっきりした音。中間的な響き。

■広母音(こうぼいん)

舌が低く、口が大きく開く母音で、もっとも開いた状態で発音される母音です。
開放的で明るく響くのが特徴です。
日本語では「」が典型的な広母音です。

  • 舌の位置:低い(口の中の下の方に舌がある)
  • 口の開き:非常に大きい
  • 発音の特徴:口を大きく開け、息の流れが大きい音。開放的な響き。
種類舌の高さ口の開き日本語例
狭母音高い(上)小さいい、う
半狭母音中くらい中くらいえ、お
広母音低い(下)大きい

前舌母音と後舌音 母音を特徴づける大事な要

前舌母音と後舌母音は、母音の発音を特徴づけるうえで非常に重要な要素です。
これらは、母音を発音するときの舌の前後の位置によって区別され、発せられる音の響きや印象、口の形に大きく関わっています。

母音を発音するとき、舌は口の中でさまざまな位置に動きます。
このとき、舌のどの部分がどのくらい上がっているか(=上下)と、舌全体が前方・後方どちらに位置しているか(=前後)が、母音の種類を決定します。

前舌母音(ぜんぜつぼいん)

前舌母音は、母音を発音する際に、舌の前方(舌先や舌の前の部分)を上に持ち上げて、口の前側で音を響かせる母音のことをいいます。
このとき、舌の位置は前寄りにあり、口腔内で比較的狭い空間をつくることで、明るく、はっきりとした音が生まれます。

響きやすく、明るくクリアな印象

■後舌母音(こうしたぼいん)

後舌母音とは、母音を発音する際に、舌の後ろ側(舌の奥)を持ち上げて、口の奥で音を響かせるタイプの母音のことです。
発音時には舌が喉のほうへ引かれるような動きになり、音の響きも深く、丸みを帯びたような印象になります。

咽頭や鼻腔側に響きが寄り、柔らかく包み込むような響きになる

■割り箸を使ったトレーニングが効果的

前舌母音と後舌母音は、音の表情をつくるうえで重要であり、発声や滑舌を扱う声優・アナウンサー・ナレーター、また語学学習者にとっても基本となる知識です。「口の開き」や「舌の位置」の理解と訓練は非常に重要な基礎です。

母音の発音を正確に行うこと、特に「前舌母音」と「後舌母音」は、舌の動きや位置によって音の響きが大きく変わるため、口腔内の動きを意識しながら練習することが求められます。

相手に誤解なく言葉を伝えるためにはも母音の違いを明瞭に発音する能力が求められます。特に、前舌母音(「い」「え」)では舌が前に移動し、後舌母音(「う」「お」)では舌の奥が持ち上がるといった舌の動きの違いを、身体的に把握し再現できることが重要です。

正しい舌・口の使い方は、声の持続性を高める

  • 長時間の収録や舞台でも喉への負担を軽減できる
  • 声の抜け・距離感を自在にコントロールできる

割り箸を使うことで、舌や口の開きの動きを視覚的・身体的に意識しやすくなります。特に、母音の種類ごとの口の形や舌の動きを把握するのに役立ちます。


■割り箸の使い方①:開口トレーニング(口の開き)

  1. 割り箸を縦に1本くわえて、前歯の間に軽く挟みます。
  2. この状態で「あ・い・う・え・お」を順に発音してみます。
  3. それぞれの母音の「口の開き方」「舌の位置」が意識しやすくなります。

→ 前舌母音の「い・え」は、割り箸に触れやすく、舌が前に出る感覚
→ 後舌母音の「う・お」は、喉の奥に響かせる意識が必要


■割り箸の使い方②:舌の動きの確認

  1. 割り箸を舌の上に水平にのせて、そのまま発音します。
  2. 舌が前方に動く前舌母音では、割り箸の先が上がる感覚があります。
  3. 後舌母音では、割り箸の動きが少なく、奥で響かせる感じになります。

→ 発音時の舌の動きの位置感覚を可視化・体感できる。

割り箸が大きすぎると感じる場合は、ポッキーやストローなどを使うと、より繊細な動きを感じやすくなります。特に子どもや発声初心者にはこちらの方が取り組みやすいこともあります。

オノマトペ

オノマトペとは、音や感覚を音で表現する言葉の総称です。
つまり、擬音語と擬態語を合わせたものが、オノマトペと呼ばれます。

オノマトペは特に日本語で豊富に使われており、言葉に音やリズムを与え、聞いた瞬間に具体的なイメージを伝える力があります。

オノマトペの種類 擬音語と擬態語大きく分けて2つに分類されます。

擬音語(ぎおんご)                                                                                                      擬音語は、実際に耳で聞こえる音を言葉としてまねたものです。
自然界の音、動物の鳴き声、人の声や動作音、物が発する音など、あらゆる「音そのもの」を表現するための言葉です。

  • 雨が降る音 →「ぽつぽつ」「ざあざあ」
  • 犬の鳴き声 →「わんわん」
  • 拍手の音 →「ぱちぱち」
  • 何かがぶつかる音 →「ごつん」

このように、耳でとらえた音の印象を、そのまま音として再現しているのが擬音語です。

擬態語(ぎたいご)

擬態語は、本来は音のない動作や感情、様子、状態を、まるで音があるかのように言い表した言葉です。
実際には聞こえないものを、言葉で「音のように感じさせる」のが特徴です。

  • 緊張している様子 →「ドキドキ」
  • ゆっくり歩く様子 →「のろのろ」
  • ふわふわした触感 →「ふわふわ」
  • じっと見つめる様子 →「じーっ」

声優・俳優・ナレーターにとって、擬音語や擬態語は「感覚を音に置き換える」訓練にもなります。

  • 「ゴロゴロ」(雷/寝転ぶ様子)→ 強さ・重さ・のんびり感の違いを音で演じ分け
  • 「イライラ」→ 不快感や焦りを音色に乗せて表現
  • 「コツコツ」→ 地道な努力か、かかとの音か、文脈で変わるニュアンスを表現

また、語学学習者にとっても、日本語のオノマトペは感覚的な理解に役立ちます。
文字で説明するよりも、オノマトペの音感でニュアンスが伝わりやすくなります。

■調音点 × 調音法 × オノマトペ 対応表

調音点(どこで)調音法(どうやって)IPA例日本語例オノマトペ例特徴・説明
両唇音(唇×唇)破裂音[p], [b]パ・バパン!バン!プンプンくちびる同士を閉じて弾けるように音を出す
歯茎音(舌先×上前歯の後ろ)破裂音、摩擦音、ふるえ音[t], [d], [s], [z], [r]タ・サ・ラタン!サラサラ、ザラザラ、ガラガラ舌を上の歯茎あたりにあてて出す
硬口蓋音(舌×上あご前方)摩擦音、破擦音[ɕ], [ʑ], [tɕ], [dʑ]シ・ジ・チ・ヂシャー、ジワジワ、チョロチョロ柔らかく鋭い音、優しい感じ
軟口蓋音(舌の奥×上あご後方)破裂音、鼻音[k], [g], [ŋ]カ・ガ・ン(語中)ガタン、グラグラ、コトンのどの奥で響く強めの音
声門音(声帯)摩擦音、閉鎖音[h], [ʔ]ハ・ッ(促音)ヒュ〜、ゴホン、ゲホゲホ息や咳など、声門で発する無声音・咳の音
鼻音(鼻から)鼻音[m], [n], [ŋ]マ・ナ・ンモゴモゴ、ムニムニ、ンーン鼻に響く柔らかい音
接近音(すき間がある)接近音、側音[j], [w], [l]ヤ・ワ・ラワイワイ、ユラユラ、ラララ摩擦がない柔らかく軽い音
ふるえ音顫動音(舌の連続震え)[r]ブルブル、グラグラ舌が震えて出る音、振動感がある

補足解説

  • 調音点は「音をどこで作るか」、調音法は「どうやって作るか」。
  • オノマトペは、私たちが音をどのように感じているかを言葉にしたもの。
  • 日本語では特にオノマトペが豊かで、調音法や調音点の感覚的な違いが、擬音・擬態語のバリエーションに活かされています。

音象徴とは 感情・動作・質感などが自然と想起される

音象徴(おんしょうちょう)とは、音(音声)そのものが意味や印象を喚起する現象のことです。
つまり、「言葉の響き」や「音のかたち」だけで、ある種の
感情・動作・質感などが自然と想起される
という現象です。

たとえば、日本語の「ふわふわ」「ゴツゴツ」「キラキラ」などのオノマトペ(擬音語・擬態語)には、特定の音が持つ響きによって、やわらかさ、重たさ、きらめきなどのイメージが伝わります。これが、音象徴の代表的な例です。

音の違いによる意味の違い

  • 「キラキラ」… 軽く明るい光 → 高い音「キ」「ラ」が連続して明るさを演出
  • 「ドシン」… 重くて鈍い衝撃音 → 低い音「ド」が重さや衝撃を連想させる
  • 「すべすべ」… なめらかな触感 → 軽くなめらかな摩擦音「す」「べ」

このように、発音に含まれる子音・母音の種類や、リズム、繰り返しなどによって、感覚的な意味が引き出されるのが音象徴の働きです。

声優やナレーター、演劇や朗読に携わる人にとっては、音象徴の感覚を活かすことが表現力の鍵になります。
たとえば、キャラクターのセリフに「チクチク」「ズシン」などの言葉がある場合、その言葉の響きに込められた質感やリズムを表現することで、聞き手により深い印象を与えることができます。

アクセントとは何か?―音の強調と意味のちがいを生み出すしくみ

アクセントとは、言葉を話すときに、ある音や音節をほかの部分よりも目立たせるために使われる音の特徴のことです。具体的には、音の高さ強さ、長さ(持続時間)などがアクセントを作り出す要素になります。

アクセントは、言葉の意味を区別したり、自然な話し方やリズムを生み出したりするために非常に重要です。たとえば、日本語では「音の高さの違い(高低アクセント)」によって、「はし(橋)」「はし(箸)」「はし(端)」のように、同じ音の並びでも意味がまったく変わることがあります。

このように、アクセントは話し手が意図を伝えるための大切な手がかりであり、聞き手が意味を正しく理解するための助けにもなります。声の仕事や語学学習などにおいては、このアクセントを正しく使いこなすことが、自然で伝わる発音の基本になります。

アクセントだけで意味を区別する日本語の語は、実は少ない?■

日本語では、言葉の意味を区別するために「アクセント(音の高低)」が使われることがあります。

しかし、実際にはこのような「アクセントだけで意味が区別されている言葉」は、全体のごく一部にすぎません。国立国語研究所などの調査によると、同音異義語全体のうち、アクセントの違いだけで意味を区別しているものは約14%しかないという結果が出ています。

これは、残りの86%の同音異義語では、アクセントの差がなかったり、差があっても文脈がなければ意味の判断が難しい、ということを意味しています。

たとえば、「くも」という言葉は、「」と「蜘蛛」という2つの意味がありますが、東京方言ではアクセントが同じです。そのため、話し手も聞き手も、発音だけではなく前後の文脈に頼って意味を判断しています。

つまり、日本語ではアクセントだけに頼らず、文章の流れや状況によって言葉の意味を判断することが多いのです。

なぜ14%しかないのか?理由としては:

  1. 日本語の語彙はもともとアクセント差が少ない
     → 同じ音でもアクセント差で意味が分かれる語は限られている
  2. 文脈で判断できるため、音の違いに頼る必要がない
     → 日本語では、単語単位の違いよりも文の構造が意味を支えることが多い
  3. 方言差や個人差も影響
     → アクセントは地域差が大きく、「東京式アクセント」での区別が他地域では通用しない場合も

言いにくい言葉

発音しにくい言葉は、調音点や発音の仕組みによって難しさが生じることがあります。ここでは、なぜ言いにくくなるのかを「調音点」の観点から詳しく解説します。

発音時に舌や唇、のどなどの調音器官の動きが複雑だったり、素早く切り替えなければならなかったりする言葉のことです。例としては、早口言葉や言い間違えやすい単語の連続が挙げられます。

■調音点関係する「言いにくさ」要因

要因解説
調音点の切り替えが多い異なる調音点を連続して使うと、舌や唇の動きが追いつかず、言いにくくなる「バスガス爆発」:両唇音[b]→歯茎音[s]→軟口蓋音[g]
似た調音点が連続する舌の動きが似ていて区別しづらく、混同しやすい「新春シャンソンショー」:歯茎音[s]・硬口蓋音[ɕ]が繰り返される
破裂音と鼻音の切り替え息の止める音と鼻から抜ける音の切り替えが難しい「まんまんまんぞく」:両唇鼻音[m]が連続
舌の位置が極端に変化する前方から奥への移動、またはその逆があると発音困難に「国語口述」:歯茎音[k]→硬口蓋音[g]→軟口蓋音[k] など

似ている音構造を含んだ単語噛みやすい

「似ている音や構造を含んだ単語」は、噛みやすくなる傾向があります。
これは、音の混同や舌の動きの混乱が起きやすくなるためです。

発音が似ている音が連続する

  • 「さしすせそ」「ざじずぜぞ」「かきくけこ」など、調音点や調音法が似ている音が続くと、舌や唇の切り替えが間に合わずミスしやすくなります。
噛みやすい例原因
ささやき声「さ」「や」「き」すべて似た音(無声音)
ばば抜き「ばば」連続する有声音+同じ調音点(両唇)

② 同じ語構造・リズムの繰り返しが混乱を招く

  • 「かかし」「ききて」「しかしか」など、似た母音・子音の繰り返しは、脳の処理も混乱しやすくなります。

③ 舌や口の動作が似ていて切り替えが難しい

  • 調音点が近い音(例:「た」「な」「ら」など)は、舌の位置が似ているため、舌が滑って言い間違いや噛みやすさが生じやすくなります。

プロでもしいさ行音

「さ行音(さ・し・す・せ・そ)」は、日本語を母語とする人にとってはなじみ深く、簡単に発音できる音のように思われがちです。ところが、実はこの音のグループは非常に繊細な発音を要するものであり、プロの声優やアナウンサーでも細心の注意を払って扱う必要がある音のひとつです。

摩擦音であること

「さ・す・せ・そ」に含まれる音が、音声学的に「無声歯茎摩擦音([s])」にあたるという点です。この音は、舌先を上の前歯の裏側(歯ぐき)に近づけ、そこにできた狭いすき間から息を摩擦させて生み出されます。わずかな舌の位置のずれや、息の勢い、口の開き方の違いによって、音が濁ったり、風切り音が強くなったりするなど、発音の質が大きく変わってしまいます。発音が不正確になると、「ズーズー」と濁ったように聞こえたり、「スーッ」と耳障りな風音が強くなったりすることがあります。結果として、滑舌が悪い印象を与えてしまうのです

  • 「スーッ」という風切り音が強くなる
  • 「ズーズー」して濁って聞こえる
  • 滑舌が悪く感じられる

「し」は特別調音点

「さ行」の中でも「し」は特殊な音で、[ɕ](無声硬口蓋摩擦音)という、英語の she に近い音に分類されます。「さ」「す」「せ」「そ」が舌先を前方に置く歯茎音であるのに対し、「し」は舌をやや奥に引き、口の中の前方で音を摩擦させるという別の調音点を使います。この違いにより、「さしすせそ」を連続で発音すると、舌の動きに切り替えが必要になり、特に早口では発音が崩れやすくなります。

  • 他の「さ・す・せ・そ」と調音点が異なるため、舌の動きの切り替えが難しい
  • 例えば「さしすせそ」を早口で読むと、舌がぶれてリズムや発音が崩れやすい

マイクに乗りやすい

さ行のような摩擦音は、マイクで拾うと「サーッ」「スーッ」といった鋭い音(シビランス)になりやすく、耳障りなノイズとして録音に残ることもあります。そのため、声のプロはマイクへの向きや距離、息の当て方まで細かく調整し、音質が悪くならないよう細心の注意を払っています。

このように、「さ行音」は一見簡単に思えて、実は発音・調音・録音のすべてにおいて技術と繊細な感覚が求められる、非常にデリケートな音なのです。話し方の美しさや声のプロフェッショナルとしての質を高めるためには、さ行音の正確なコントロールは避けて通れない課題といえるでしょう。

「い」の発音が音程のズレやすさにつながる理由

「い」という母音は、一見すると簡単な音に思えるかもしれませんが、実は発声においては非常に繊細で、音程がずれて聞こえる原因にもなりやすい音です。とくに「あ」や「お」など、他の母音から「い」に移行する際には、声が急に高くなったり、音程が不安定になったりすることがあります。この現象には、身体の構造や音の響き方(共鳴)の特徴が大きく関係しています。

喉頭が最も高くなる母音のひとつ

「い」を発音するとき、舌は口の中で前方かつ高い位置に持ち上がります。この動きに連動して、声帯のある「喉頭(こうとう)」も上方向に引き上げられやすくなります。喉頭が上がると、声帯がピンと張りやすくなり、その結果、自然と声の高さ(ピッチ)が上がってしまうのです。つまり、意識していなくても、「い」は他の母音よりも高めの音になりやすいという特徴があります。


「い」の音は自然に高めになりやすい

「い」の母音は、声の響き(共鳴)の周波数が高い特徴があります。
共鳴の周波数、つまりフォルマントと呼ばれる音の響きのピークが高くなりやすい性質を持っています。フォルマントが高い音は、聞いたときに明るく、鋭く、そして高く感じられます。そのため、たとえ実際の音程が変わっていなかったとしても、「い」だけが浮いて聞こえることがあるのです。

歌やセリフでずれやすい

声優やアナウンサー、歌手など、声を使う専門家たちは、「い」の発音で音程が不安定にならないよう、喉頭の位置や舌の動き、声の響き方を細かくコントロールする訓練を行っています。「あ」や「お」などから「い」へ滑らかに移るためには、喉頭が急に上がらないように注意し、力の入れ方や共鳴のバランスを意識する必要があるのです。

このように、「い」という母音には、構造的にも音響的にも、声が上ずったり、音程がずれたりしやすい要因がいくつも含まれています。その特性を理解し、正しく発声できるようにすることは、声の表現力を高めるうえで非常に大切なポイントとなります。

  • 「あ」→「い」や、「お」→「い」のときに、音が「キュッ」と浮いて聞こえる
  • 声が細くなったり、響きが前に出すぎてしまう

といった現象が起こりやすくなるのです。

「ラ行」が苦手な人の繰り返す練習方法


「ラ行(ら・り・る・れ・ろ)」の発音が苦手な人は多くいます。その理由のひとつは、「ラ行」の発音には舌先を素早く動かす繊細な操作が必要だからです。

ラ行の発音では、舌先が上あごの前方(硬口蓋の少し後ろ)に軽く触れて、すぐに離れるという動きが求められます。この動きがうまくできないと、音が濁ったり、曖昧になったりします。

「ラ行」が苦手な人は、口を大きく開けて「あらあらあら」と繰り返す練習が効果的です。

この練習によって、舌の位置や動きが整い、発音がはっきりしてきます。話し方や滑舌に自信がつき、人前で話すときも安心できるようになります。

  1. 口を大きく開けることで、舌の自由な動きを確保
    • ラ行の舌先の動きがスムーズになる
    • 口の中の空間が広がり、発音がクリアになる
  2. 母音「あ」との組み合わせで練習しやすい
    • 「あ」は最も口を開ける母音 → 発声の基礎作りに最適
    • 「あら」を繰り返すことで自然な舌の動きとリズムが整う
  3. リズミカルな反復が舌の筋トレになる
    • 「あらあらあら…」とテンポよく繰り返すことで、
      舌先のタッチとリリースのタイミングが身につく

練習のポイント

  • 鏡を見ながら口を大きく開けて行う
  • 舌先が上あごの「歯茎の少し後ろ」に軽く触れるのを意識
  • 声をしっかり出す(発声と発音を同時に鍛える)
  • 慣れてきたら「あら」「いら」「うら」など母音を変えて練習

■笑顔で声色が明るくなる

私たちが誰かと話すとき、その人の声の印象からも、気持ちや雰囲気を感じ取っています。中でも「笑顔で話すと、声も明るく聞こえる」ということは、多くの人が経験している自然な現象です。これは偶然ではなく、表情と発声が密接に関係しているからです。

笑顔をつくると、口角が上がり、口の中の空間が広がります。この変化により、声の通り道である「共鳴腔」が変わり、音が前へ抜けやすく、軽やかで明るい響きの声になります。

また、笑顔は心にも影響を与えます。笑顔をつくると、脳が「今は安心している」「楽しい」と感じやすくなり、気持ちが前向きになります。気持ちが明るくなると、声の出し方にも変化が生まれ、自然とのびやかな声になります。

さらに、笑顔で話す声は、聞き手にも好印象を与えます。たとえ顔が見えない状況でも、声だけで「やさしい」「楽しそう」といった印象を伝えることができます。だからこそ、接客業や電話対応、声優やナレーターのような職業でも、「笑顔で話す」ことがとても大切にされているのです。

  • 口や顔の形が変わって声が響きやすくなり
  • 気持ちが前向きになって声に明るさが加わり
  • 聞く人にも好印象を与える

笑顔は「声の表情」を豊かにしてくれるシンプルで効果的な方法です。明るく伝わる声を出したいときは、まず笑顔を意識することから始めてみましょう。自然と、声に光が差し込むようになります。

自分の声・歌声を好きになることの大切さ

私たちは日々、自分の声で話し、歌い、気持ちを伝えています。
けれども、録音された自分の声に違和感を覚えたり、他人の声と比べてしまったりして、「自分の声が好きじゃない」と感じる人も少なくありません。

あなたの声は、世界にひとつだけの音色であり、あなた自身を語る楽器です。
その声を認め、愛することができたとき、声はもっと自由に、もっと豊かに響きはじめます。

■ 声は体そのものだから人それぞれ違って当たり前

私たちの「声」は、身体の構造によって生まれるため、一人ひとり異なる特徴を持っています。その中でも特に重要なのが、喉の奥にある「声帯」です。

声帯とは、左右一対のヒダのような組織で、ここに息が通ることで振動が起こり、声のもとが生まれます。声帯の長さ・厚さ・柔軟性には個人差があり、それが地声の高さや響きの違いに影響しています。たとえば、声帯が長くて薄い人は高い声、短くて厚い人は低くて太い声が出やすい傾向にあります。


■ 声は生まれつきだけじゃない ―― 訓練で変わる部分もある

「地声は生まれつきだから変えられない」と思われがちですが、実際にはそうではありません。声帯そのものの構造は変えられないにしても、声の出し方・息の使い方・響かせ方は、トレーニングによって十分にコントロールできるようになります

声帯の使い方を練習すれば、

  • 声帯の振動をよりコントロールできるようになり
  • 高音や低音を無理なく出せるようになり
  • 声の響き・通りやすさ・安定感も改善されます

つまり、「地声」は変えられないけれど、「出し方」「聞こえ方」は大きく変えられるということです。


■ 肺活量もボイトレで鍛えられる

声を生み出すためのエネルギー源となる「肺活量」や、呼気のコントロール力も、発声トレーニング(ボイトレ)を通じて鍛えることが可能です。正しい呼吸法(特に腹式呼吸)や、声帯の使い方を意識した練習を重ねることで、

たとえば、腹式呼吸やロングトーンの練習を続けることで、

  • 息をムダなく使えるようになる
  • 息が切れにくくなり、長く安定した声が出せる
  • 歌でもセリフでも「最後まで伝わる声」になる

つまり、「声」は先天的な体のつくりと、後天的なトレーニングの両方で成り立っているものです。自分の声の特性を理解し、必要な力を鍛えることで、地声の魅力を活かしながら、より豊かな発声を手に入れることができるのです。

自分の声を好きになることは、表現の第一歩。
それは、あなたらしい「伝わる声」を育てる、大切な扉を開くことなのです。

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